豆柴のマメは、わたしの実家近くにある、和風庭園を持つ大きなお家で飼われていた犬でした。その立派なお家は、急な坂の斜面にあるため、マメがいる門前の庭は、通行人が見下ろせる高さになっていました。

なので、毎日の通勤で、その坂を通るわたしは、マメの様子をチェックするのが習慣でした。

マメは、その庭で放し飼いにされているようでしたが、朝は、決まって、門前の庭で、夕方は、生け垣のある中庭にいました。

飼い主さんは、きっとマメを朝早くに散歩に連れ出しているのでしょう。わたしが朝通るときは、散歩後の快眠中なことが多かったのですが、夕方帰宅時には、いつも生け垣の間から、可愛い顔をのぞかせて、通行人ウォッチングをしているのでした。

マメは、人懐こくて、おとなしい犬でした。そして、容姿が可愛い!きっと、たくさんの通行人から、頭をなでられていたのでしょうね。そういうわたしもその一人でした。なでない日はないくらい!

そのうち、マメもわたしを覚えてくれるようになり、ある日、いつものように、マメをなでるために名前を呼ぶと、なんとマメがボールをくわえて現れたのです!そして、わたしが手を差し出すと、ポトンとボールを手のひらに落としました。まるで、「遊ぼう!」と誘っているかのように!

わたしは、少しの間、ボールで引っ張り合いっこの遊びをした後で、その日はマメと別れました。そして、次の日、いつもの坂にいくと、石垣から、ボールが見えます。よくみると、マメが、ボールをくわえて、わたしを待っているのです!

その日を境に、マメは、ボール以外でも、自分のおもちゃやお菓子、そして飼い主さんのものであろうボロボロのスリッパなど、日替わりで、何かをくわえては、わたしに見せてくれるようになりました。その行動が、どれほど、わたしの帰宅途中を楽しませてくれたことでしょう!

結局、わたしが地方へ嫁ぐことになり、マメとのやり取りも終わってしまったのですが、今でもマメがくれた、この小さな思い出を忘れることができません。